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  • DATA

    2021/11/

  • PROJECT NAME

    TOHOKU Lab

    PHOTO

    Takumi Ota
    ※Except experimental and under construction photos.

Self-Driven Research

天井のシミのように

東京のスタジオはそのままに、仙台にサテライトラボをつくった。打ち合わせやバックオフィス業務のためではなく、「つくり」そして「考える」事に専念し、未知の「何か」にアプローチするための空間である。

天井を見上げ、木目の柄やシミを”顔”や”雲”に見立てた幼い頃の記憶のように…、それぞれの想像を誘うような状況を空間に求めることはできるだろうか?それは、一般的なオフィスが期待する「予定」された目的のための空間とは異なる。そこにある設えの目的の外側にある「何か」に誘い、人が抱く予定調和の思考から、しばし脱線させるきっかけに溢れた空間である。

そのような仮説から、限りなく「素」なオブジェクトを、天井のシミの如く空間に配置する構成とした。全てのオブジェクトは一見素な状態ではあるが、例えばテーブル、棚、椅子のように、しっかりと目的を持っている。しかし、素材への手の介入を最小限にすることで、それらが単なる素材なのか?目的を持った物なのか?その境界線上にゆらゆらと存在するような状態を作り出している。そんな不安定な存在との対峙が想像の呼び水となり、天井を見上げ、様々な想いを馳せたあの頃の体験のように、それぞれの見立てを引き出していく。

今日見るそれと明日見るそれは、違ったものに見えるかもしれない。そしてそこに、絶対的な解ももちろん存在しない。そのような事を喚起し、肯定する空間である。

論理立てた目的のみを追うことは、時に人の創造性を奪う事もあるのではないだろうか。デザインの役割は、使い手に効率や使いやすさを「与える」事だけではない。人間の創造性を「引き出す」事でもあるはずだ。

このラボでは、予定された目的と、その外側にある未知が共存し、制御できない時間が揺らぐように流れている。人間の意図ではどうする事も出来ない厳しい自然との共生が基本である東北の生活も、本来そのようなものだったのかもしれない。

この空間で、自主的な研究プロジェクトはもちろん、プロジェクトを共にする方々とも思考の時間を共にし、未来を耕す仮説を生み出したいと思っている。