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749399458「表情」を生み出すデザイン

100年間ゴムを極めたブリヂストンは、新たな挑戦として「ソフトロボティクス事業」に取り組んでいる。そのロボットハンドのコンセプトモデルの製作を、ビジョンの策定から具現化まで一貫してデザインの視点から協業した。
 
AI等のテクノロジーにより、知能はより高度により柔軟に進化している。一方、固いハードウェアが一般的なロボットの身体そのものはその柔軟さに追い付いておらず、人とロボットとの関係はまだまだぎこちない。その限界を融かすため、ゴムと空気によって柔軟に動く柔らかな存在が、ブリヂストンが目指すソフトロボティクスである。

「対話」というプロジェクトビジョンを最初に設定し、チームで共有していった。その都度さまざまな状況に臨機応変に働きかけていく行為を「対話」のレベルまで引き上げる事が、目指す姿の究極の在り方ではないかと考えたのだ。このビジョンを合言葉に、指の動きだけではなく、丸まった姿からハンド自体も展開するなど、状況によって変化する柔軟な機構自体もさまざまに提案、プロトタイピングと共に具現化していった。

また、通常ファッションの世界で使われてきた一体型の「無縫製ニット」で全体を覆うことを、外観のデザイン手法として提案した。無縫製ニットのパターンを工夫することで、ハンドの曲がりに従って、ニット内面の色が表出する。その姿は頬を赤らめる顔の表情のようにも見える。表情が対話を円滑にする様に、この外観の豊かな表情の「変化」は、これまでのロボットの「変形」とは大きく異なる親しみのある印象をもたらす。

ありたい姿を、テクノロジーと表現を高度に結びつけてデザインすること。
そのためには、ビジョンの設定と共有、そして柔軟なアプローチで既存の枠組みを超えるデザインによるものづくりの自由さが大きく寄与できる。そんなデザインの役割が最大化されたプロジェクトである。