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1070190864記憶との再会

2000万年前に生成され、世界的に珍しい表情をもつ「伊達冠石」。
その唯一無二の表情が彫刻家やアーティストに注目され、彫刻家のイサム・ノグチ氏もその作品の素材として用いていた事でも知られている。その採石と加工・施工を行い、「山にいのちを返す」という理念のもと活動されている大蔵山スタジオ株式会社(宮城県)とのコラボレーション。2年に渡る大蔵山でのリサーチや実験を通して、椅子やベンチといった家具のシリーズをデザインした。



<Design Concept>

「山にいのちを返す」という大蔵山スタジオの理念は、「山にいのちがある」というメッセージに感じる。

石が砕けて土となり、草花が自生し、そこに生き物たちが集まる…。「いのち」は単独では存在できず、互いに影響し合っている事に、山に立ち気がつかされる。「山にいのちを返す」とは、そのつながりに、畏敬の念を呼び覚ますことから始まるのかもしれない。

大蔵山の地表は、鉄分が多い伊達冠石が風化して生成した「大蔵寂土」という赤土に覆われている。石が土へと変容し、山のいのちの循環が凝縮されたこの土は、大蔵山のいのちの記憶そのものである。

寂土の地表に無垢の鉄板を直接置き、しばらく放置する。寂土から錆や鉄分が付着した鉄板は、時間をかけてその記憶のテクスチャーを纏いながら錆びていく。それはさながら、山の記憶のそのものをフロッタージュするかのような行為である。

そんな山の記憶を纏った鉄板のフロッタージュを、寂土の起源である伊達冠石と「再会」させる。マテリアル同士が響き合うその姿は、大蔵山における記憶と記憶の再会であり、いのちのつながりを私たちに呼び覚まさせるオブジェクトである。


<Exhibition Concept>

石。風化した石の欠片。欠片と動植物の関わり。そして山の地表となった土。

これらが地面に並べられている。素材の紹介が主目的ではない。長い時間に関係しあい、変化し、今も共存する、動的な山のマテリアル同士の「繋がり」の展示。この各々の姿をマテリアルの記憶と解釈した。中心的な存在である3つの椅子は、山の記憶が再会する様に、石、石の錆を纏った鉄板を出会わせる事で造形している。材料化された素材ではなく、自然の繋がりから考えるデザインのあり方の展示。